二人は恋人。
氷高 颯矢
愛してるって伝えて、口付けを交わす。
ただそれだけで幸せを感じるのは、きっと貴方だから。
初めての恋に破れて、その傷口も癒えないままで出会った人。
5月の風のように爽やかに私を救ってくれたよね。
貴方の腕は木漏れ日のような温かさ。
優しく、守るように抱きしめてくれる。
そんな貴方に私が返せるものは何?
この愛情をどうやって表現すれば良い?
貴方じゃないけど、こうするわ。
きっと一番、貴方に伝わると思うから…。
大切な君に伝えたい。
僕は、幸せなんだよって。
片思いの時間が長かったから、まだ実感ないけど。
でも、傍で…隣で笑ってくれる君を、僕はずっと夢見てたから…。
まだ夢を見てるのかって、時々思うけど、
夢ならずっと覚めなければ良いのにって、懲りずに願ってる。
ずっと一緒に居たいって…いつも思ってるんだ。
僕のこの気持ち、どうすれば君に伝わるだろう?
僕なりに考えて、これしかないって思った。
僕らしい方法――。
二人の誕生日の間に、その日はある。
「結婚1周年おめでとう!」
「ありがとう、フェンネル。
でも、本当はこれからが1年目みたいなものなんだけどね…」
「何にしろ、お前が幸せならそれで良い…」
フェンネルはワインの入ったグラスをカチンと合わせると
ご馳走を囲む人の輪に加わっていった。
かわりに、その妹のシレネがやって来た。
「おめでとうございます、アーウィング様」
「ありがとう、シレネ。今夜は随分綺麗だけど…恋人でもできた?」
こっそりと耳打ちすると嬉しそうに笑って、
「まだ、秘密です…」
と、かわされた。
「それよりも、アーウィング様…本当に、幸せなんですね…」
ホッとしたような表情をする。
彼女にも心配をかけてたから、これで安心してもらえるだろう。
アーウィングは嬉しい気持ちを隠さず、笑顔で返す。
「アーウィング…」
透明な、それでいて優しい声。
「リディア…」
お互いが笑顔になる。
毎日顔を合わせているのに、いつまでたっても色褪せない気持ち。
「それ…」
アーウィングはリディアの胸元に白い花を見つけた。
「アザレア。私の気持ちが伝われば良いと思って…」
「同じ気持ち…不思議だね。こういうの、以心伝心って言うのかな?」
リディアもアーウィングの胸元に気が付いた。
「本当、不思議…だけど、きっと幸せってこういう事を言うんじゃないかしら?」
「言葉のとおりだね…」
アーウィングはリディアの手を取って、
その薬指、黄金のリングに口付けると、
今度は唇にキスをした。
「愛してる。これからも、ずっと、ずっと――」
「愛してるわ。私を幸せにするのは貴方だけなんだから…」
白い花、アザレアの持つ言葉は、
――貴方に愛されて幸せ。
これは、コピー本のボーナス小説でした。
らん先生と一部の人しか知らないので関係ないですが。
この話の疑問な点は「アザレアは胸に付けられるような花だったかしら?」
と、いう事です。